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シーズダイジェスト

情報活用のアイデアをかたちに人とコンピュータの新しい関わりをテーマに「こうあってほしい」を実現する 理工学部 情報メディア学科 外村 佳伸 教授

[プロフィール]
京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了、博士(情報学)。日本電信電話公社横須賀電気通信研究所 研究員、米国MITメディア研究所 客員研究員、NTTヒューマンインタフェース研究所主幹研究員、NTTサイバーソリューション研究所 主幹研究員、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 主席研究員/所長を経て、2010年より現職。

理工学部 情報メディア学科 外村 佳伸 教授

日々進歩する情報技術は、インフラとして、また便利な道具として、さらに私たちを取り巻く環境の一部「情報環境」になりつつあります。

私たちは、人がこうした情報環境とインタラクション(やり取り)する際の、情報活用の新しいかたちを提案するとともに、「未来を創ろう!」をモットーに、今は誰も知らないけれど、10年後20年後には当たり前になっているような、人とコンピュータの関わりを創造することを目指しています。

理工学部 情報メディア学科 外村 佳伸 教授

NTTの研究所に30年近く在籍して、主に映像を使った情報処理やその応用のほか、情報環境が人や社会に対してどうあるべきかということをテーマに研究していました。

龍谷大学に来てからはより具体的に情報環境をデザインすべく、それ自身は今すぐに使えないかもしれないけれど、「こうあってほしい」というアイデアを考え、それをかたちにし、さらに外に示していろいろな意見をもらいながら、実用につながる研究をめざしています。学生諸君もそれぞれ自分で出したアイデアに基づく研究テーマに取り組んでいます。

これまでのコンピュータやスマートフォンは、すべて私(個)対メディアの関係でした。最近、街中でさまざまな情報を発信するディスプレイをよく目にしますが、将来これがどうなるかを考えると、今までの人とパソコンとの関わりとまったく違ってくるはずです。今までは何かをしたいと思ってパソコンに向かっていましたが、ビルに取り付けられた大きなディスプレイのように公衆空間に置かれるものは、何かをするためにそこを通ったり立ち寄ったりするのではないし、キーボードやマウスもないわけです。

そうした情報環境は人の感覚や体そのもので、だれでもスッと理解できて、しかも複数の人で使えるようにしないといけないため、課題が違ってきます。インターフェイスというよりも、インタラクション=何がそこでやり取りされるかが重要です。インタラクションは、何をしたいかとか、体をどう使うかとか、使いやすい、使いにくい等々、いろいろなファクターが入ってくるので、結構人間のことについて知っていないといけないわけです。

そこで大切なことは、まず見る人がわくわくしたり、ニコニコできるものであることです。学園祭の「龍谷祭」で研究室公開をしますが、子どもたちは本当に正直に反応してくれます。マウスもキーボードも使わず、われわれの持っている普通の感覚を利用して、その延長で誰でもすっと入り込んで自然に使えるようにすることをめざしています。

研究テーマは学生一人ひとりと長い時間かけて議論して作りますが、発端は日常生活にあります。各人が興味を持っている分野で、「こんなことを解決できないかな」とか「こんなことできたらいいのにな」といったことから始まります。

具体的な展開としてはデジタルサイネージと言われる街頭の広告や情報発信といったところに比較的早く活かせるのではないかと思っています。他に、コンピュータを使って音楽や画像を活用するアイデアも毎年テーマとして出てきますので、そういうところも具体的な展開分野として考えられます。

めまぐるしい早さで技術が進歩する中、情報環境の作り方で気を付けないといけないことは、これが実現したらどういう影響があるか、こういうものを作ったらどういうことが起こるかということを考えないといけないということです。

その中でも特に重要なことはもっと人を使うということ。例えば答えを先に示すのではなく、まず考えさせることです。すぐに答えが出てしまうようなシステムで、頭を使わないことが当たり前になると、例えば漢字が書けなくなるようにいろいろな能力を失うことになります。情報環境はそういうことが多くて、見えないうちに進行する怖さがあります。

そこで人がやるべきことは人がやるような環境を作る、敢えて自動化しないで、ここは人がやるとかいうことをできるだけ組み込んでいくようにしています。実は表に見えている「あれができる、これができる」ということより、その後ろにある見えない部分をどのように作るかが難しいんです。

以前米国MITのメディアラボに在籍した時にはいろいろ刺激を受けましたが、その後もそこではさまざまな夢のある研究が行われていて、ハリウッドの映画の中でも取り上げられています。

私たちの研究室でも「こんなことできたらもっと楽しく、快適になる」ということをいち早く考え、かたちにして見せて、それを実際のサービスや製品に活かすことができればと思っています。

修士課程の矢野さんの研究

矢野さんの研究(1)

(1)街頭などに設置された掲示板からスマートフォンに欲しい情報(画像)を取り込んだり、伝えたい情報を投げる動作によってスマートフォンから掲示板にはることができる。
「大きなディスプレイと自分の端末を組み合わせて何かおもしろいことができないか」と考えたことが研究のきっかけとなった。

矢野さんの研究(2)

(2)超短焦点プロジェクターを利用して、スマートフォンの画像データをテーブルの上に投影し、画像を集めて選んだりする作業が直感的にできる。

矢野さんの研究(3)

(3)メモ用紙型の枠内にタッチペンで伝言などを書いて、手を使ってディスプレイに貼ったり、掲示してあるメモをスマートフォンに取り込んだりできる。

4回生の卒業研究から

カメラとマイクを備えた7面の60インチ画面を活用したシステムで、卒業研究に取り組んでいます。

4回生の卒業研究から(4)

(4)「ありし日のペットと遊ぶためのシステム」飼い犬の画像を処理して、自宅の庭を背景に、人が歩く方向に犬もついてきたり、タッチすると鳴いたり、声に反応して伏せなどができるようになっている。
元気に走ったり声に反応したりする姿を見て、ペットを亡くした悲しみを癒すことが期待できる。

4回生の卒業研究から(5)

(5)「指揮者体験システム」「オーケストラを指揮してみたい」というところからスタートした研究で、指揮棒に反応して、各パートの楽器が音楽を奏でる。早く振ったりゆっくり振ったりしてテンポを変えたり、振り幅を変えて音量を調節したりできる。

研究者からのメッセージ

日常に驚きを、驚きを感動に、感動を日常に

人をわくわく、ニコニコさせる技術の研究開発は、まず研究者自身が楽しくなければできません。私たちの研究室のキャッチフレーズは「日常に驚きを、驚きを感動に、感動を日常に」ということです。

また、方針の一つに「デモを絶対やる」というのがあります。27、8年前、私が在籍したMITのメディアラボは、まさに未来をかたちにするところでした。そのためには、人にそれを見せることができなければならないということで、「Demo or Die」というすごいキャッチフレーズが使われていました。

私たちのアイデアの中には、意外に早く実用化できるものがあるかもしれませんが、それはこれからの出会いにかかっています。

いろいろなアイデアや技術をお見せした時に、「これをこういうことに使えないか」といったお話があると幸いです。