生物の運動と感性を解明しロボットを動かす要素技術へ 空・水中・陸上の生物活動から賢いロボット創りを目指す 機械システム工学科 渋谷 恒司 准教授

[プロフィール]
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。同研究科博士後期課程単位修得退学。早稲田大学理工学部助手を務め、博士(工学)早稲田大学取得。 1998年より龍谷大学理工学部助手、講師を経て、2007年より現職。 「生物」をキーワードに、ロボットにおける感性表現の実現や知能を研究。現在、鯨型浮力調整装置(水中ロボット)の開発、鳥型ホバリングロボットの開発、4脚ロボットによる走行の実現、バイオリン演奏ロボットの開発などをテーマとしている。

生物に由来する軽快かつ賢い行動を追求し
ロボットの動きや豊かな表現力に応用

機械システム工学科 渋谷 恒司 准教授


現在「ロボット」に関する研究は加速的に進化し、その領域は広く深く拡大し続けています。その中で我々が研究のひとつの焦点としているのが「生物に由来する賢さ」です。その賢さをロボットに再現していくため自然界にある「動き」の研究に注力し、生物が動くためのあらゆる動作とそれに伴う感性の原理を徹底して解明していくことを目指しています。研究の基本姿勢として、実際にモノを作って動かすことをポリシーとし、データ解析やシミュレーションにとどめることなく、素材・形・構造・動作手段などすべてを具体化し動かして実証していきます。

研究対象の中心は、水中、空中および陸上における生物型移動ロボットです。生物の形態や機能を真似た機械システムの開発を通じて、生物の動きに関する知能や感性を追求したいと考えています。具体的には、マッコウクジラの脳油による浮力調整の仮説に基づいた水中ロボット、羽ばたきによってホバリングを可能とする鳥型飛行ロボットの開発、また頭部を持つ4脚走行ロボットを開発しながら頭の動きが歩容に与える影響を調べています。これらと並行して、バイオリン演奏ロボットの研究を通し、ロボットによる豊かな感性の表現手法を研究課題としています。

水中ロボット

水中ロボット

4脚ロボット

4脚ロボット

人間型ロボットアーム

人間型ロボットアーム


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鯨がもつ浮力調整機能の仮説に基づき
新たな浮力調整装置を備えた水中ロボットを研究

機械システム工学科 渋谷 恒司 准教授

マッコウクジラの頭部に「脳油」と呼ばれる物質が詰まっています。油の性質上、溶けることで体積が増加することから、マッコウクジラはこの脳油の固化・融解によって浮力を調整しているのではないかという仮説があります。水中ロボットの研究では、この仮説にヒントを得て、脳油を応用した浮力調整装置を備えたシステム構造の開発を行っています。 ただし、実物の脳油を使うことができないため、システム内に脳油に見立てたワックス入りの浮力調整装置を複数組み込んでいます。このワックスが溶けるにしたがって体積が増えて浮いてくるところまで、すでに実証済みです。例えば前方だけ溶かせば前に進む事ができ、これに推進力を付けると水上に向かっていくでしょう。

今後は脳油を冷やし固化する実証も必要ですが、現在使用しているワックスでは融点が高く、多くの熱量を必要とする問題があるため別の物質を探しています。これが解決できれば、さらに融解と固化の往復だけでなく浮力の「制御」を目指したいと考えています。具体的には、装置内の温度調節によって、あらかじめ設定したグラム数へ浮力の微調整を可能にしていくことなどが次のステップです。また、もうひとつ課題としているのが外部制御による「自律」で、システム内部に電池も組み入れ、無線またはそれに代わる物で操作することも考えています。


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空中静止によって実用性に富む鳥型ホバリングロボット
シンプルな機構でハチドリの羽ばたきを目指す

飛行ロボットについて、我々の研究で特に着目しているのが、飛びながら空中で静止するホバリングです。鳥類の中でホバリングを行うのが、身体が小さく高速で羽ばたく「ハチドリ」で、これと同様の動作をロボットで目指しています。

この羽ばたきを実現するには、まずアクチュエータに何を使うかという問題があります。現在は小型の電気モーターを使用していますが、回転モーターを往復運動にするため、どうしても様々な機構を付けなければなりません。しかしそれでは高速で羽ばたくことが難しく、しかも羽ばたきに大きく角度をつけることも機構的に難点となっています。多くの機構を取り付けると、形がおかしく不格好になり、そのためにうまく飛行できないという問題が起こります。ある程度の大きさではクリアできても、極めて小型で軽量な、我々が目指す10グラムや10数グラムという世界になると容易ではなくなります。我々は羽に柔らかい素材を使って、なるべく少ないアクチュエータでの実現をターゲットにしています。

このような小型でのホバリングという難しい技術が実現できれば、そこから飛行中にモノと接触しても引き返したり、方向転換して別の方向に行くなど、小回りがきくものに応用できます。また空中静止ができれば、センサーなどを搭載することによって、多様な調査も可能になります。このような狙いから、将来的に産業界のニーズに応える要素技術への進化が考えられると思います。

※ ホバリング
空中静止のこと。鳥の中で空中静止できるものの代表格としてハチドリが挙げられる。

※ アクチュエータ
電気等のパワー源からのエネルギーを、回転や直進等の機械的なエネルギーに変換する機器のこと。代表的なものに電気モーターがある。

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エネルギー効率のよい移動へ進化する4脚ロボット
頭の動きにおける歩行への影響を研究

様々な動物の中で、移動に使うエネルギー効率がよいと言われているのが4足動物です。我々の研究では、このエネルギー効率のよい移動を目標に、まず生物の形を真似て走行できる4脚ロボットの開発を行っています。関節は回転関節にしてねじりコイルばねを使い、走行に必要な跳躍力を実現しています。

この研究は、当初1本足の跳躍からスタートして、現在の開発まで約6年かけています。初代の1脚の動きでは地面を蹴飛ばす力を必要とするため、跳躍力について関節の観察などに注目し、エネルギー消費も研究しました。ここから構造を複雑化させてゆき、4脚ロボットによる歩行およびこれに頭部をつけたロボットによるバウンド歩容の実現へ研究は進化しています。 現在4脚ロボットに関して注目しているのは「首ふり」が与える歩行への影響です。例えば競走馬の走行には必ず頭が動いています。また恐竜の歩き方の特長は、頭を前に出して頭に引っ張られるかたちで前進します。このような「首ふり」の意味を調べるために、研究中のロボット頭部におもりを付けるなどによって動かしています。

また、頭部だけでなく足や首の長さを実際の馬の比率に似せて作り、それがどう歩くか、さらにきちんと接地しているかを観察するために、足の裏にセンサーをつけ、それを制御していくことも計画しています。

※ 歩容
馬などの4脚動物における脚の動かし方のこと。ウォーク、トロット、ギャロップなどがあり、馬は移動スピードに応じて脚の動かし方を変えている。

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情感溢れるバイオリン演奏を目指す人間型ロボットアーム
豊かな感性表現を可能とするロボットの実現へ

生物由来による移動型ロボット研究の一方で進めているのが、人間が持つ感性に注目したバイオリン演奏ロボットです。バイオリン演奏は、弦を押さえる指と弓を引く腕の非常に巧みな協調動作であると同時に、奏者が耳でとらえる音の情報を聞き分ける感性が表現力に大きく影響します。

このバイオリン演奏ロボットの開発には2つの狙いがあります。1つ目は、ロボットがより細かな作業を可能にすることです。弓の制御に繊細な力加減を実現できれば、ロボットの可能性を格段に広げることができるでしょう。2つ目は、感性を表現できるロボットの実現です。これには、まず「明るい音を出す」あるいは「暗い音を出す」という感覚的な行動を起こす時に人間の脳の中で行われている情報処理を解明しなければなりません。それから音色を変える時の運動の変化をとらえ、その変化をロボットに与える方法の具現化を目指します。

プログラム通りの演奏ではなく、「明るい」・「暗い」といった感性表現を表わす言葉を指定した時、それに応じた音色を奏でるロボットです。これによって「もう少し明るい音を出して」と指示すると、それに応えて音を出すようなことが可能になります。

現在バイオリン演奏ができるロボットアームを製作しています。またフレーズ演奏ができるように、左手に相当するフィンガリング装置も開発する予定です。これを用いて様々な音が出せるように研究を進め、表現力豊かな演奏を実現したいと考えています。

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我々のテーマは、生物に関係しているという点で共通していますが、取り組み内容は多岐に渡っています。水中、空中、陸上、バイオリン演奏による感情表現にしても、あまり研究範囲を狭くしたくないという思いがあるからです。
各研究に関してアイデアは数多くあるものの、生物の運動や感性を実際にロボットの動きへ適用させていくにはクリアしなければならない課題も少なくありません。水中ロボットにも、試験材の融点が高いという問題があり、まずこの解決が不可欠です。また、生物を起点に考えていく上で、工学系の知識だけではなく、生物研究の知見も必要です。これらの点では、共同研究やコラボレーションも視野に入れ、それぞれの課題に対してパートナーを探すことも考えていかなければなりません。
更に、要素技術の発展も必須で、ロボットの進化において、例えばモーターやセンサがクリアしなければならない問題もあります。その点において、アクチュエータと呼んでいるモーターなどの研究も我々自身が進めていく必要があると考えます。現在まだ具体的な活動には至っていませんが、この部分を開発し様々な要素技術の向上に携わることにより、今後広く産業界に貢献できる研究に近づいてくると捉えています。

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