研究会型

「龍谷の森」がつなぐネットワーク

里山をめぐる人間と自然の共生に関する総合研究

2004〜2008年度 文部科学省私立大学学術研究高度推進事業
「オープン・リサーチ・センター整備事業」

代表:宮浦 富保(龍谷大学 理工学部教授)
メンバー:里山学・地域共生学オープン・リサーチ・センター、地域住民、環境NPO・市民活動団体、自治体、学生
主なフィールド:滋賀県大津市(龍谷大学隣接地「龍谷の森」)

概 要

里山ネットワーク モデル図

 里山は、人間が長期にわたって手を入れ、自然と多様な形で関わり、自然と共生することによって、人間同士の共存を可能にしてきた場所でした。日本の生物の多様性は里山の存在によって維持されてきたということも明らかになりつつあります。
 ところが、エネルギー革命と農業革命のため里山は放置され、都市の膨張とともに開発のターゲットにされてきました。生物多様性を維持し、人間の生活を支え、日本文化の形成にも密接に関連していたと考えられる里山が失われようとしています。
 里山学・地域共生学オープン・リサーチ・センター(通称:里山ORC)では、大学が所有している「龍谷の森」を主な舞台とし、里山での生物多様性の維持機構、里山と人間の関わりの歴史、現代社会での里山の位置づけなどについて総合的な調査研究を行っています。
 この研究活動は、里山の保全活動、里山をフィールドとした自然教育・環境教育という実践活動そのものの可能性追求を研究内容として含み、また、地域の市民や行政とのパートナーシップの構築と、それを基盤とした里山保全活動の可能性の追求を、重要な課題としています。多様な分野の研究者、学生、地元地域の市民による、「里山づくり」「里山保全」の研究と活動は、里山に関する総合学である「里山学」に結実される予定です。

研究活動内容

活動光景1

 理系・文系の総合的視点から里山を研究し、里山保全活動を媒介とした環境教育および地域共生のモデルを構築することをめざしています。このような里山研究を通じ、日本の自然や日本文化の成り立ちなどについても再認識することができるのではないかと考えています。
 さらに、里山利用に関する伝統的な知恵を掘り起こし、現代の「持続可能な社会」を作り上げるためのヒントを見いだそうとしています。

〈研究班1〉生物多様性・環境計測調査研究

 本研究班では、里山の生物多様性の実態や里山生態系について研究しています。また、気象観測やエネルギー循環の調査を通じて、里山の持つ気候緩和効果や二酸化炭素固定能力について調べています。さらに、ため池の創成・落葉かき・森林伐採などのかつての里山管理を復元し、生物相の復元過程を追跡調査しています。

〈研究班2〉社会人文科学・地域共生学調査研究

 里山利用の制度と文化を文書や町村史などの調査や聞きとり調査によって研究しています。祭礼・しきたりといった習俗・慣習、入会・社会規制なども研究しています。それらの研究成果を地域共生の新しい形に結びつけることをめざしています。また、環境教育のための里山モデルを構築し、「里山ネットワーク」を形成しようとしています。

保全活動内容

2001年から、有志の教員によって地域住民との交流が行われており、市民の方々や学生たちと共に、「龍谷の森」保全活動や里山シンポジウムが展開されてきました。保全活動に参加した市民の方々の、会員制の組織を作ってほしいという強い要望により、2003年「龍谷の森」里山保全の会が結成されました。
 NPO法人登録はしていませんが、もちろん非営利的な会員組織です。このような一連の活動を基盤として、2004年5月、文部科学省の採択を得て「里山学・地域共生学オープン・リサーチ・センター」が開設されることになりました。
 現在、会員は120名で、活動は1〜2ヵ月に1度行われています。主な活動は森とその周辺の整備ですが、その他に間伐材を利用したシイタケ栽培や、落ち葉を集めて腐葉土作り、自然観察会などを行い、市民、子ども、学生が、楽しみながら里山保全に参加しています。また、里山ORCの公開講座に協力して、山野草摘みと料理を手伝うなど、里山ORCと連携した活動も多く行っています。

活動光景2 活動光景3

トピックス住民と共に里山保全に取り組む学生グループ「共存の森関西」。

集合写真

 「共存の森関西」は、森の"聞き書き甲子園"という高校生の活動を経験したOB・OGの関西メンバーを中心としたグループです。
 2005年から「龍谷の森」と上田上堂町をフィールドとして活動しています。“人の暮らしとともにあった里山の姿”はどんなものであったのか、里山にはどんな可能性があるのかなど、“里山と人のつながり”をテーマに、地域の住民と共同で里山保全の活動を行うと共に、地域文化の記録を行っています。

他団体・グループとの
連携について
連携可能 特に条件はありません。

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