2018年度 EFFECTORSフェスタ(龍谷大学社会連携・社会貢献活動報告会)
EFFECTORSフェスタ(龍谷大学社会連携・社会貢献活動報告会)2019年3月24日(日)12:00start(自由参加)

場所:龍谷大学深草キャンパス 和顔館1階 クリエイテイブエリア、アクティビティホール

プログラム

12:00〜12:50
学生による社会連携活動のポスターセッション

13:05〜13:55
特別講演会「分かち合う社会へ~自己責任論を越えて~」
今井 紀明(いまい ・ のりあき)氏
認定NPO法人DxP(ディーピー)理事長

14:10-15:35
学生による社会連携活動のプレゼンテーション

※途中での出入り自由です。お気軽にお立ち寄りください。


EFFECTORシールで共感する学生の活動を応援しよう!

龍谷大学では、学生の自主的な活動や、地域と連携した社会貢献活動を支援する「龍谷チャレンジ」という採択型の制度を実施しています。当日は、本学学生が取り組む子ども食堂や、滋賀県の伝統野菜を使用した商品開発などの取り組みの他、ボランティア・NPO活動センターや、同じ伏見区にある京都教育大学の取り組みを学生からポスターとプレゼンテーションで報告します。

共感する取り組みのポスターにEFFECTORシールを貼って応援しよう!
(12:00-15:40、場所 和顔館1階 クリエイテイブエリア)

 

EFFECTOR(学生)による報告一覧

大津の伝統野菜「坂本菊」伝承プロジェク卜 みんなの居場所作り事業
学生と地域を“つくる” で繋ぐ「龍谷町家つくる基地」 後世に伝えよう!伊庭の魅力再確認プロジェク卜~想いをつなぐ~
インド農村部の小学校における異文化理解を目的とした異文化交流ワークショップ 近江漬物開発プロジェクト
龍谷大学NPO・ボランティア活動センター 子どもとつくる繁栄会プロジェクト
京阪ホールティングス連携プロジェク卜 大津市の伝統野菜の栽培と外国人観光客向けの商品開発を目指すプロジェクト
京都教育大学の学生活動 フットパスでつなぐ、地域の魅力アップ事業

special contents 今井紀明氏と深尾昌峰Ryukoku Extension Center センター長の対談

変人×変人—変える人—

深尾 今日は、「EFFECTORS フェスタ」で今井さんに講演いただくにあたり、対談をお願いしました。宜しくお願いいたします。

今井 宜しくお願いいたします。

社会課題に取り組むきっかけ

今井 僕は高校まで札幌にいて、高校生のとき、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立して、紛争地域だったイラクへ渡航し武装勢力に拘束されたんですが、その件で挫折している期間が長くあって、大学に進学してようやく回復したんです。

深尾 今から振り返ると、あの事件は今井さんにとってどの部分が印象強いのでしょうか。バッシングを受けたことでしょうか。

今井 バッシングの印象がやっぱり強いですね。拘束から解放された帰国後に、道端で殴られたり、罵声を浴びて、対人恐怖症のような状態になりました。

深尾 そこからの変化は何がきっかけだったのでしょうか。

今井 朴基浩という、のちのD×Pの共同創設者と会って、「自分のことなんて、誰も理解してくれない」と愚痴をこぼしていたら、朴に「でも自分で行動しないと何も変わらないよね」と言われたのが転換点だったかと思います。色々な後輩の支えがあって精神的に回復していきました。あと、大学のあった別府は、温泉があるためか癒やしのまちだったこともよかったと思います。深尾さんが地域に深く関わるきっかけは、なんだったのでしょうか。

深尾 僕が二十歳のときにあった阪神・淡路大震災ですね。大きな転機のきっかけとなったことの一つは、「何もできなかった」ことです。財産をなくしたり、子供を亡くして打ちひしがれている人たちに直接なんと声をかけたらいいかわからなかった。自分の小ささを見せつけられました。あと一つは、僕は祖父も父もサラリーマンで、いい学校に行っていい会社に勤めるのが幸せという価値観で育てられてきたのですが、被災地で避難所に行ったら、平日の昼間にボランティアをしているおっちゃんがいて、「世捨て人」みたいに見えたんです。

今井 カルチャーショックですね。

深尾 後でNPOの人と知るのですが、育った価値観と違う人が世の中にはたくさんいて、人のために頑張っている姿に揺さぶられました。僕の大学生の時は絶不調な経済状況で、モラトリアム的に大学院に行くことを決めて、出会ったNPOの人たちの基盤が非常に脆弱であることや、もっとオルタナティブなものをつくれるよね、と考えたのがスタートです。

今井 僕は大学卒業後に商社に入って、入社と同時に「自分より年下の世代のために仕事をしたい」とも決めていたので、商社で働きながら学校回りを始めました。通信制高校の先生と出会い、通信制高校の生徒の生きづらさを知ったことがNPO法人D×P設立のきっかけになっています。

引きこもりという希望

深尾 今井さんは今、高校生と接していて、どんなことを考えていますか。

今井 僕が支援している生徒は不登校や、高校を中退していたり、経済的に厳しい状況にいる生徒が多いですが、ひとりひとりが可能性を持っていて、実際に変わっていくんですよね。生徒からたくさんのことを学んでいます。すでに働いて家計を支えているという子もたくさんいて、自分でお金を稼いで来ている分、とてもしっかりしています。

深尾 引きこもりの子はどうなんでしょうか。

今井 引きこもりの子たちは、考える時間がたくさんあるんですよね。考え抜いて自分と向き合っていると思うんです。普通では持つことができない感性や考え方を持っていて面白いです。

深尾 イタリアで哲学者の人と話したときに、日本には”引きこもりという希望”がある、彼らが現代の社会構造に適応しにくいことを、ポジティブに「抵抗」と捉えることができる、と言われたんです。

今井 とてもいい言葉ですね。

深尾 人生を懸けて抗っていると捉えると、確かに現代社会の生きづらさみたいなものをきちんと示し、アラートしていると見えて、非常に納得しました。その話を講義ですると、300人の講義で20人位が不登校だったとか、虐待を受けてたと言ってくれる学生が出てくるんですね。当事者性を強みとして捉えるということを学生と一緒に考えています。

同調圧力がしんどい社会

深尾 学校について今井さんはどのように捉えていますか。

今井 高校生を見ていると、学校には空気を読まなきゃいけない強い同調圧力があって、しんどそうだな、と感じます。思いきったことをしにくい場だと思うのですが、じゃあ学校から抜けてしまえばいい、学校に行かないという発想があまりないと思います。

深尾 学校へ行ってない子に対して「なんで?」とは聞くけど、学校に行っている子に「なんで学校へ行ってるの?」とは聞かないですよね。

今井 学校自体は大切だと思うのですが、疑問や、思いついたことがあれば直感的に学校を出て、自分でコミュニティを形成するのも良いと思います。与えられるのでなく自ら行動することが最も重要であり、やりたいことをするための方法論は後で学べると思うんですよ。

深尾 今井さんがイラクに行き社会からバッシングされたのも同調圧力と関連すると思うのですが、社会や学校のあり方は変わっていますか。

今井 同調圧力が日本で非常に強いことは基本的に変わっていないと思います。変わらないからこそ、学校教育で、学校から出るという選択肢があることを示すことが大事だと思います。

深尾 本学では、「お膳立て」され、予定調和のゴールが用意されているのではない、学生自身の社会的な課題に対しての挑戦を応援する、「龍谷チャレンジ」という取り組みをしています。どんどんチャレンジして、いろんな失敗をしてもらいたいんですよ。高校生とか大学生は「ごめんなさい」って言ったら大概のこと許されますよね。そういう大学の過ごし方があることを高校生にもイメージしてほしいですね。

若者の持つ力

今井 クラウドファンディングを使ってネット上で広く資金を集めている姿を見てると、昔の互助の概念を今の若者たちは体現していて、今後社会保障に近い仕組みになっていくのではないかとも思っています。

深尾 若い世代はシェアがうまいし、所有や独占にあまり執着がないから、多くの人から受け入れられますよね。もっと社会がポジティブに位置付けたほうがいいと思うんです。例えば今の若い子たちは、車は走ればいいと思っているのを「所有欲がなく、弱々しい、頼りない」と捉える風潮もある。でも、その感覚はこれからの時代をつくる“すべ”であり、色々な可能性があると思うんです。

今井 一つ気になるのは、いわゆる“やんちゃ”と呼ばれる生徒が少なくなってきたことで、怒りや悔しさ、喜怒哀楽みたいなものが発散できていないのかもしれないと感じています。平和的過ぎる一面もあって、疑問を持ち、本当にそれでいいのかと敢えて大人にぶつけることが重要だと思います。コミュニティが細分化されているから、共通の価値観がないと思うし、共通で語ることができる雰囲気をつくっていくことが大事だと思います。

最後に

深尾 私は今40代で、今井さんは今30代ですが、どういう40代をイメージされてますか?

今井 6年後になりますが、海外で事業を展開したいと思っています。日本の若者の状況は他の国も当てはまり、例えば韓国ではより深刻かもしれないです。若者支援を、アジアをフィールドとして、進めていきたいと考えています。

深尾 確かに構造的に同じ問題があると思います。ネパールの薬物依存の人のケアに関わっていて、経済成長を急激に遂げ中流層が生まれる中で、日本と同じ“ひずみ”が若者に影響を及ぼし始めています。今の日本の経験が、アジアや新興国で活きてくると感じました。

深尾 強い原体験を持ち前に進み活躍する今井さんを応援しています。本日はありがとうございました。

今井 政府ができない領域が多く存在しているからこそ、頑張りたいと思います。ありがとうございました。

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