天然木を薄くスライスしたツキ板の端材を利用して、バッグを作りたいという樋口伸一社長の夢を実現するため、1999年にRECに研究所を開設しました。
物質化学科の大柳満之教授との共同研究によって、ツキ板に樹脂を充填させて、補強材として和紙や不織布、天然皮革、帆布を貼り合わせることで、天然木の持つ暖かな質感を損なうことなく、十分な強度と柔軟性を持った「天然木自在シート(縫える木)テナージュ」の開発・実用化に成功しました。
ツキ板をラッピング材として表面に貼った従来の製品は、強度を保つため表面をプラスチックやフィルムで覆うため、天然木の風合いが失われているのが難点でした。
1999~2004年入居
阪根勇会長が40歳で独立、4名でスタートした同社。 現在の主な事業分野は、複写機やプリンターの重要部品を開発、製造する「イメージング事業」、超耐熱性の機能性樹脂を開発、製造する「ポリイミド樹脂事業」、炭素繊維強化プラスチックを中心とした「コンポジット事業」、不燃機能繊維や天然機能繊維を扱う「テキスタイル事業」などがあり、他にも医療用の特殊部材や計量機器など、多分野にわたり他社にない製品を世に送り出しています。
研究開発に必要な設備や研究の核となる知恵を得るために、1期生としてレンタルラボに入居、産学連携による研究開発を柱に事業を展開してきました。「専門分野の資料や特許も含めた文献がすぐ手に入る環境は本当にありがたかった」と言う。
1994~1998年入居
日本人には馴染みが薄い“三角ようじ”は、欧米ではデンタルピックと呼ばれ、口腔ケア商品に位置づけられています。日本で唯一この三角ようじ製造する同社ですが、量産に至るまでに直面した様々な課題を、RECとの共同研究で解決した経緯があります。
同社では三角ようじを製品化するため、当初、従来の丸ようじの先端を三角柱にする製造法に取り組みました。しかし、これでは生産本数をあげることができないため、RECに相談、大量生産できる生産機械を共同開発しました。その後、ようじをカットする刃物の切れ味を保つ方法についても、RECの担当者に相談して解決を図りました。
「その時の担当者に、『悩むより一緒に現場に行ってみましょう』と研磨の現場まで連れて行ってもらい、現場を見て問題解決の糸口にすることを教えてもらいました」と言う稲葉修会長。このような発想が出てくるのも、民間企業出身の教員が多い龍谷大学ならではと評価します。
今、日本のものづくり力の衰退が言われていますが、日本にしかない全く新しい技術や製品を開発していくことが、特に中小企業に求められています。「そのためにも産学連携が大きな力になる」と稲葉会長は考えています。
1999~2004年入居
起業時からホームエネルギーマネージメントシステム(HEMS)に必要な、家庭向けの電力見える化システムなどの開発を、電力会社から受託して手がけてきた同社。東日本大震災以降、電力会社を取り巻く状況が変わったこともあって、自社で製品開発に踏み切ることになり、まず着手したのが昼間に蓄電池からの電力供給に切り替えることにより電力需要のピークを抑えることができる、「REEARTH(リアス)」という制御用分電盤システムの開発・製品化でした。
まだ普及・導入されていない中堅クラスの住宅メーカーをターゲットに販売を行う一方、蓄電池についても自社で開発に着手することになりました。蓄電池は充放電の際必ずエネルギーにロスが生じますが、エネルギーロスが少なく、低価格で提供できる家庭用蓄電池の開発を目指しています。
「RECのコーディネーターに相談したところ、電子情報学科の石崎教授を紹介していただきました。石崎教授は我々が考えていたことを、長年違う分野からアプローチされていたため、非常にスムーズにご指導いただけることになりました」と言う田中社長。交流電源を扱うため、危険なことも多いのですが、RECの施設を活用できることでリスクを回避しながら、スムーズに研究開発に取り組める点を高く評価しています。
2009年~現在入居中
入れ歯や差し歯などの義歯を製作する会社として1996年に設立した同社。歯科技巧で扱える新しい素材を探す中で、PVA(ポリビニルアルコール)という材質に出会い、浸水性が高く、形状や硬さを自由に変えられるPVAを活かした「マウスガード」や、医療シミュレーター「手術練習用臓器モデル」を開発しました。
新商品開発を手がけるようになったことを機に、「会社を大きくするためには環境を変える必要がある」と考えるようになったと言う岡野仁夫社長。
大津市からレンタルラボの紹介を受け、設備が充実していると商談もスムーズに行えるうえ、新商品開発のためのデータ収集を行うのには、大学という環境が最もふさわしいと判断して、2010年に入居しました。
職場環境が整ったことで、社員のモチベーションが高まり、商品開発はもちろん、歯科技工業においてもより質の高い仕事に取り組めるようになりました。
現在は、物質化学科の中沖隆彦教授の指導のもと、PVAのデータ的な裏付けを行っていますが、今後は新たな材質を発見するための共同研究も進めていきたいと考えています。
2010年~現在入居中